Monarch は、数百・数千時間をかけた開発・改良の末、参照する項目や扱う数字・数式が非常に多くなっているので、細かい所を見始めるとキリがありません。
一応、その中でも有益であろう部分を抜き出して出力し、公開してはいるのですが、それでも元々自分のみが使う目的で開発されているので、基本的には分かりにくいモノになっていると思います。
簡単に見ようと思えば、ソフトの適性総合評価を確認していただければ良いのですが、折角その他の項目も出力しているワケですし、それらがたまに有益な情報をもたらしてくれるコトもあるので、項目ごとに簡単に解説しておこうかと思います。
※2020年・2021年頃の執筆で、内容が古くなっています。
(データの意味や計算式などは2024年現在も同じです。)
目次
位置取り指数について
いつもだいたい、この『位置取り指数』の一覧を一番初めに出していると思います。
コレは、文字通り、当該レースにおけるそれぞれの馬の位置取り(隊列想定)を Monarch が算出したものです。
古くから私のソフトの情報を参照されている方でも、『指数』という言葉に釣られて、一般によくある『スピード指数』などのいわゆる『強さ』の指標と勘違いされている場合が結構多いように感じます。しかし、全く違うモノですので、その点にまずご注意下さい。
位置取り指数の算出方法
『位置取り指数』は、主に出走各馬の近5走の内容を参照した上で算出しています。(場合によって少し変わるコトもあります。)
参照項目は、距離、位置取り、ペース、レーステンタイム、自己テンタイムなど、多岐にわたるので、全て細かく挙げていくコトはできませんが、かなり緻密な計算をしています。
あらゆる条件を一定の基準で評価する為に作ったので、基本的には、ダート馬と芝馬、あるいは短距離馬と長距離馬を並べて比較するコトもできます。
・前走ダートで逃げた馬と、前走芝で逃げた馬が、
今回一緒に芝(あるいはダート)を走ったとして、一体どちらが前に出るか。
・前走1200mで中団前目を走った馬と、前走3200mで大逃げを打った馬が
2200mで相まみえた時、いずれが前に出るか。
といった判定も一応できる仕様になっています。
まぁ実際には無さそうな条件ですが…(特に後者w)。
位置取り指数の意義
さて、『位置取り指数』がまるで完璧な数値かのように書きましたが、全くもってそんなコトはありません。
実際のレースの位置取りというのは非常に流動的であり、馬の調子、馬の気分、陣営の作戦、鞍上の判断、刻々と変化する展開、各馬の能力差、風、などなど、様々な要素が絡み合って生まれるモノなので、『とんだ的外れ』になるコトも多々あります。
一筋縄ではいきません。
しかしながら、それは主観的な判断で予想する場合も同じコトですよね。
・逃げると思った馬が逃げなかったり
・控えると思った馬が出して行ったり
・スローに落とすと思われていたのに大逃げを打ったり
・ハイペースで引っ張ると思っていたのにスローに落としたり
といったコトが頻繁に起こります。
このように、コチラが何か想定しても、その通りにいってくれないのが競馬ですから
それならばいっそ、もう機械的に隊列を出してしまおう!
という試みが、この『位置取り指数』の算出です。
位置取り指数の信頼度
Monarch の解析全般に言えるコトですが、主観的な情報を一切排除して、客観(数的)情報を扱うため、基になるデータの量によって信頼度は変化します。
つまり、参照できる情報量が少なくなると、必然的に信頼度は落ちるコトになります。
参照できる情報量が少なくなる状況というのは、例えば、キャリアの浅い馬が集まる若駒戦などの時です。
前述の通り、『位置取り指数』は主に近5走の結果を基に算出していますが、例えばキャリア1戦の馬は、前走の内容しか参照できる情報がありません。
この場合、参照項目が少なくなる分、算出された数値・評価の信頼度は当然下がります。
5戦連続で逃げている馬は、次の6戦目も逃げるだろうなと容易に想像がつきますが、新馬戦で逃げて勝った馬ばかりが集まった1勝クラスのレースでは、どれが前に出るか分かりにくいですよね(もちろん、それを予想するためのファクター自体は存在しますが)。
信頼度が低くなるというのは、要するにそういうコトです。
あとは、海外や地方交流重賞を回ってきた馬の数値も信頼度が落ちます。
それは、地方・海外レースの解析ができないからです。
再三申し上げている通り、Monarch はかなりの数の参照項目を膨大な計算量で捌いていますが、その際にフツーは見ないような細かいデータも採用しているので、それらが取得できない海外や地方のレースでは、Monarch の解析が成立しません。
もちろん、それ以外のレースデータは採用されるので、中央でのキャリアがある馬の場合、一応解析自体はできるのですが、直近のレース(地方・海外)が除外されるので、やや正確性に欠けるデータが算出されるコトになります。
最後にもう1つ、当たり前のコトですが、新馬戦に関しては、この『位置取り指数』という数値は出ません。
というか、基本的に Monarch では解析自体できません。
Monarch は既に確定した明確な客観的事実のみを参照するので、中央で一度も走っていない馬は解析のしようがないのです。
(実は調教を解析するコトはできるのですが…それはまたチョット別の話なので。)
地方から参戦した馬や海外から遠征に来た馬も同様です。
位置取り『タイプ』
似たような言葉が続いてややこしいですが、普段、位置取り指数の一覧とラップ適性解析表には、位置取り『タイプ』を併記しています。
コレは、分かりやすく言い換えれば『脚質』としてしまっても良いかも知れません。
全部で5タイプあり、表記は【A・B・C・D・E】。
Aが最も前で、B・C・Dと続き、Eが一番後ろです。
位置取り『指数』がミクロ的な表記だとしたら、位置取り『タイプ』はマクロ的な表記といった感じでしょうか。
隊列想定をする場合、あまり先頭から18番手までを全て綺麗に並べるコトはないですよね。
恐らくマクロ視点で大まかに並べるコトが多いハズです。
位置取りタイプは『脚質』で置き換えるならば、逃げ・先行・好位(中団)・差し・追込、というように言い換えられるかも知れません。
いやむしろ、その方が分かりやすいと言えるでしょう。
しかし、Monarch にはそういう表記をさせていません。
理由は色々あるのですが、一言で分かりやすくいえば「実際にそう変換してしまうと、そのワードが持つイメージに思考が引っ張られてしまうから。」といった感じでしょうか。
基本的に Monarch は、揺らぐコトがない客観情報を基に全てを一定の基準で判断しているので、敢えて機械的な表記にしている、と言っても良いかもしれません。
いきなりですが、ココで1つ、
『逃げ』って何でしょうか?
もちろん、スタートから先頭に立ち、勝負所までずっとトップを走っていれば、それは逃げでしょう。
では、
3000mのレースで、スタートから500m地点までを①が先頭で引っ張り、
500m地点から②が前に出て1000mまで馬群の先頭を走り、
1000m過ぎから③が先頭に出てレースを引っ張り、
1500mを過ぎた辺りで先頭が④にかわり、
2000m過ぎで⑤が④にとってかわる。
2500m地点では⑥が先頭になっていた。
場合はどうでしょうか?
さすがに2500m地点でやっと先頭に来た⑥を『逃げ』とは言わないでしょうケドも
レースを見ていた人達それぞれが考える『逃げ馬』は、果たして全員一致の同じ1頭でしょうか?
では、
1500m地点まで①が先頭で、そこから先はゴールまで②が先頭だったら?
②は逃げ切り勝ちでしょうか?
もしそれが、1000m地点まで①、そこからゴールまで②だったら?
500m地点まで①が先頭で、そこから先頭にかわった②がそのままゴールしたら?
チョットややこし過ぎたでしょうかw
要するに、『脚質』って『イメージ』だと思うんですよね。
『イメージ』って何かって、言うならば『主観』です。
それは、ソフトの判定とは正反対にあるモノ。
だから、ソフトは、「逃げ」だとか「先行」だとかは言いません。
その表現はある程度定義付けられているようでいて、結局はイメージの用語だから。
先程の設問に少し答えるなら、
実際には「初めは①が逃げてて~… 途中から②が逃げて~…」というような表現になるんでしょうケドも、
1つのレースに逃げ馬が何頭もいて、ココからが①でココからが②だ、なんていうのは非常にややこしいですよね。
だからソフトは定義付けます。
「~まで先頭だった馬がA」あるいは「~の『地点で』先頭だった馬がA」
といったような形で。
なので、皆が思う『逃げ馬』と、ソフトが判定する『位置取りタイプA』は違ってくる可能性があります。
ただ、Monarch は常に一定のルールに従って計算しているので、レースによって判断基準が揺らぐコトはありません。
常に、特定の条件下で、特定の位置取りを示した者が、Aであり、Bであり、Cであり、Dであり、Eです。
だから、厳密には『逃げ』≠『位置取りタイプA』となるのです。
位置取り指数によるペース判断
位置取り指数は、隊列想定の他に、ペース判断にも使われます。
ザックリ言ってしまえば、「位置取り指数の高い馬が集まったレースは、タイムの前後半差がマイナスに傾きやすい。」というコトですが、、チョット分かりにくいですかねぇ。。w
要するに、「位置取り指数の高い馬が多いほど、ハイペースになりやすい」というコトです。
ただ厳密には、そう言い切ってしまうとやや語弊がありまして、、
実際のレースのペースは、距離や展開、馬場状態によって大きく左右されるので、位置取り指数はあくまでペース判断のファクターの1つでしかありません。
なのでココでは、「位置取り指数の全体値がペース判断の参考になる。」というコトだけ明言しておきます。
実は、以前のブログではペース示唆についても書いていたんですが、ややこしいので途中で止めましたw
もし需要があれば、公開するかも知れません。希望の声がたくさん挙がるとかがあれば。
位置取り指数の『補助値』
他の解析項目にも言えるコトですが、位置取り指数は万能ではありません。
なので、数値の信頼度が低くなりやすいレースもありますし、位置取り指数の値に殆ど差が無くて判断しにくい場合もあります。
そういった位置取り指数が信頼しづらい状況に対応するため、Monarch は『補助値』という値を出力してくれます。
補助値は、通常、位置取り指数の右隣に『機動力平均』の名前で、同じように並んでいます。
位置取り指数が僅差の場合は、補助値の高い方が前に出る確率が高くなります。
更には、位置取り指数の順位と補助値の順位に大きな違いがある場合、位置取り指数の信頼度が下がってしまう傾向もあります。
まぁ、何と言っても『補助値』なので、位置取り判断に関しては、あくまで参考に使う値というコトなのですが。
位置取り指数の具体例
①第88回 日本ダービー【東京優駿】(2021)
上の表は、見ての通り、2021年の日本ダービー(東京優駿)出走各馬の位置取り指数です。
位置取り想定Aタイプのバスラットレオンが実際に逃げました。
番手で追いかけたタイトルホルダーは、位置取り指数も2番手でした。
(バジオウも同数値に見えますが、左の順位表記が明確に2位と3位に分かれている通り、実際の指数は小数点第2位以下も算出されており、微妙な差ではありますがタイトルホルダーが上位となっています。)
※タイトルホルダーの正確な位置取り指数は14.043、バジオウは14.026
スタートした直後に3番手につけたエフフォーリアは、3コーナーまで想定通りの位置取りBタイプ。
位置取り指数は5位でしたが、高い補助値に合わせるように、5番手よりも少し前目に出していきました。
勝ち馬のシャフリヤールは、想定通りのDタイプ。
他の人気馬を見ると、サトノレイナスなんかは、Monarch の想定よりもかなり前でレースを進めていたようです。
Monarch が総合適性評価の上位に選んだラーゴムは、想定よりもかなり後ろ目の位置取りだった模様。
このように、まんま想定通りの位置になる馬もいれば、全く違う位置取りになる馬もいるのがフツーです。
コレも普段ブログで公開している、当該レースの過去ラップ一覧・詳細版です。
好走馬の位置取りタイプを見ると、近4年の日本ダービーは勝ち馬が全てBタイプ。
しかし、それ以前の3年を見ると勝ち馬はCタイプが続いていました。
更には全体的に見てもCタイプの好走数が多く、母数を考えても、ダービーで明確に優勢な位置取りタイプはCでした。
(通常、母数はだいたいEタイプが最も多く、次点がBタイプ)
一方、過去10年でAタイプの逃げ粘りはゼロ。
Eタイプも、母数が大きい割に好走数はかなり少ないという傾向がありました。
一見するとDタイプも少ないのですが、実は仕様上、DとCは近い扱いなので、この場合はDもどちらかというと優勢な位置取りに分類されます。
つまり、好走確率の高い位置取りタイプはB・C・D。
好走した3頭は、いずれも Monarch が狙いをつけた位置取りであるB・C・Dの範囲内に想定されていた馬でした。
ただ、実際の位置取りと想定は少々違います。
勝ち馬のシャフリヤールは前述の通り実際の位置取りもDタイプでしたが、エフフォーリアはDタイプ。
(エフフォーリアはBの位置でレースを進めていたのでほぼBタイプなのですが、丁度3コーナーに入る辺りで多数に外からまくられたためか、ソフトの判定では実はDタイプ。)
ステラヴェローチェは想定よりもやや後ろで、実際のレースではEタイプでした。
このように、実際の位置取りは非常に流動的で Monarch の想定通り綺麗に並ぶハズはないのですが、それで問題はありません。
1番手から18番手までの隊列を言い当てても、あまり意味はないからです。
隊列想定に関しては、大まかな位置さえ分かれば戦略を立てられますし、結果的にですが、このダービーも想定位置取りタイプが好走スポットとなっている馬で決まりました。
このダービーの例で分かる通り、位置取り指数は、
・隊列の想定
・ペース判断
に加えて、
好走確率が高いと思われる位置取りを割り出し、そこにフォーカスするようになっています。
ちなみに、いつも言及している好走位置取りタイプというのは、過去ラップ一覧を見て分かるレベルの話に留めていますが、実際の Monarch はペース予測なども含めてもう少し緻密に計算した上で好走確率の高い位置取りを算出しています。
最後に、勝ち馬のシャフリヤールは(チャートの解説でお見せしますが)ラップバランスチャートの適合率が17頭中1位でした。
ソフトの論理では、位置取り想定に加えて、この適合率の高さが勝利の要因だったと結論付けられます。
ただし、シャフリヤールはラップ適性解析での評価が上がらなかった為、最終的なソフトの総合適性評価は上位となりませんでした。
ですので、残念ながらこういった個別の強調ポイントは、総合評価をサラッと見ただけでは分からないというコトになります。
それが、各種解析項目を毎回出している理由です。
位置取り指数 総括
位置取り指数は、全く的外れな時ももちろんありますが、コレをヒントに狙い馬を絞るコトができる時もあります。また、「どれが逃げるか分からない」「展開を読んでから予想したいが、どういう並びになるかイマイチ想像がつかない」といった際にも、仮想隊列として役立つ場合があります。最近は明確に公開していませんが、ペース示唆にも役立つ数値なので、Monarch の中では比較的重視されている項目ではあります。
また面白い例や、分かりやすい例を見つけたら追加で公開する予定です。ホントはもっと良い例があったと思うんですが、1つ1つ掘り起こしてみるのは大変で、パッと出てきませんでしたw
その他の参照項目解説
位置取り指数の見方